水に燃え立つ螢

意識しだすと、駅で毎日擦れ違うことに気付いた。地元のツレの知り合いに、凛と同じ中学の奴がいて、名前と住所を知ることになる。

あの頃の俺は、時間を持て余していたんだろうな。バイクで家を見に行ったりもした。
その内、俺はただ見てるだけの行為に限界がきて、あの日、駅の階段で声を掛けた。

お前は足早に通り過ぎ、俺なんてガキだと言わんばかりの視線で睨みつけた。


「気ぃ強ぇよ」


ツレは笑ってやめとけと促したが、俺はどうしても頭から離れなかった。姉貴の旦那の相手だということは、正直どうでもいい。お前が、そんなに幸せだとは思えなかったんだ。

階段で声を掛けた日、家に帰ると姉貴が来ていてこう言った。


「最近、様子がおかしいの」


俺は原因を知っていたが、聞き流し鼻で笑っていた。


「思い過ごしじゃねぇの?」



お前の中で、俺という確固たる識別が欲しくなり、翌日に学校まで行った。これは、俺自身不覚だったよ。

『ストーカー並だ』

自分で笑えた。




校門で待っていると、友達と出てきたお前。


そして、駅での強引なキス。




そこまでして、俺はお前に知ってもらいたかった。

俺という存在を。


嫌われても、疎ましく思われても、俺を覚えてくれるなら…と、捨て身の覚悟だったよ。




力ずくでモノにしようとは思っていないが、それに近いことをお前にはしてしまった。

だが、あのキスのお陰で識別が生まれたことは確かだ。