水に燃え立つ螢

一路は嗚咽する私の背中に、何度も手を当てた。母の思いが痛い。痛くて、胸が焼ける。

長い手紙を読み終えて、父に返す。



「私、母は幸せだったと思っています…」

「本当にすまない…」

「父さん…」


私の言葉に顔を上げて、再び涙が溢れ出す父。




「俺に父親の資格なんて…」




「父さん…です」




『父親』

その存在自体、私にはないとばかり思ってきた。

その『父親』が、私にもいた。それが、嬉しい。



そして、母が死ぬ間際まで恋焦がれた人。

それが、父。



「凛に良く似てるな」

「よく言われてました…」






「…凛に会いたいよ」



父は再び、深い悲しみに飲まれた。




あの日、あの駅。

涙を飲んだ二人。



きっと、想像以上に苦しみ抜いたんだろう…




「母さんを愛していますか…?」





「ずっと…ずっと愛してる」




母との思い出を話して、泣いたり笑ったり。

父にない記憶を、できる限り伝えた。


「アイツらしいな」


鼻を赤く染めた父が、母として生きた『凛』を、私の言葉の中で見ていた。