水に燃え立つ螢

「今日はもう店を閉めるよ」


そう言って父は暖簾を外し、店内にいるお客さんだけで終わる様子をみせた。

私は、まだ母の手紙を渡せていない。



一路が手を握って、その手に力を込めた。

「良かったな」

一路がいなければ、きっと見つけられなかった。

「ありがとう」



最後のお客さんが店を出た後、私は母の手紙を渡した。

「母からです」

「…俺に?」

「はい」

「今…今読んでいいか?」

コクンと頷くと、父はハサミで封を切った。私は、出てきた手紙の厚さに涙が溢れてくる。


手紙を読み出してすぐ、父は言った。


「俺の…娘…?」

「私も、母が亡くなってから知りました…」

「悪い…ちょっと…」


父は席を外し、カウンターの奥へと消えた。


暫くして父の泣き声が響き出し、とても痛々しい声に胸が締め付けられる。

慰めなんてできるわけがない。そんなの、父は必要としていない。



だって、どう足掻いても、母はもういない。


だから、父が出てくるまでそっとしておいた。



「悪かった」

と笑って言って、奥から戻ってきた父はまだ涙が溢れていて、気持ちの処理に心がついていってないように見えた。