水に燃え立つ螢

季節は冬の匂いを運び始めた。やはり父の所在は掴めないまま、それでも諦めずにいた。



仕事帰りの一路が、珍しく先に私の家に寄った。


「最愛…気になることがあるんだ…」


この一路の言葉が壁を突き破る。


「何…?」

「あの駅あるじゃん」

「あの駅って、あの?」

「駅前通りの裏って行ったことあるか?」



駅前通りの裏?行ったことあるというより、裏があるなんて知らなかった。



「裏に何があるの?」

「『凛』って店があった」



母の名だ。



「関係ないかもしれないけど、一度行ってみないか?」

「何の店…なの?」

「多分、居酒屋だよ」

「今から…そう!今から行かない!?」


私たちは時計を見てから、すぐに家を出た。