水に燃え立つ螢

「昨日ね、一路から聞いたの」


席に着いてすぐ、おばさんが言った。


「あ…父の話ですか?」

「そう。私ね、昔にお母さんから聞いたことがあるの」





まさか、おばさんに父の話をしているとは思わず、食事の手が止まる。外は雷が鳴り、雨が強さを増していた。

「まぁ、私が知っているのは、お父さんの居場所ではないんだけれど…」

「あ…そうなんだ…」

「でも、恥じる行為でできた娘ではないって」

「うん。それは充分分かってる」

「多分、同じ街にいる筈だとも言ってたわ」

「お…同じ街…?」

「見つかるといいわね」

「うん」




同じ街…この街…?母は一度も越していない。なら、この街だ。


夕食の片付けをして、一路に家まで送ってもらった。


「知らないなら呼ぶなよな…」

「ううん…嬉しかった。だって、この街にいるかもしれないし」

「そうだな」



部屋に上がり、一路と再び電話帳に目を通した。


「希望を感じるよ」

「俺も」


やはり見当たらない父の名。大きなため息をついて、伸びをした。



「最愛…」

「んー?」

「お前さぁ…どう思ってる?」

「何が?」


ソファーに座る一路を見た。


心臓が一度だけ、ドクンと鳴った。



「俺のこと」

「急に…何…?」

「俺ら『幼馴染み』?」

「…違うの?」




本当は『幼馴染み』を脱していた。

本当は、もうずっと前から違っていた。