水に燃え立つ螢

次に私たちがしたことは、電話帳で父を見つけることだった。

だが、父は電話帳に番号を載せていないようで、其処にも父はいなかった。





ふと…



「…生きてる…よね?」



電話帳を適当に捲りながら、誰に問いかけたわけでもなく呟いた。

「大丈夫だよ…信じないと」

いつになく一路が優しくて言って、私の目にかかった前髪をそっと触った。視界がクリアになり、そのまま一路を見ると、右手で頬杖をついて笑っていた。


「一路」

「ん?」



何を言おうとしていたのか、自分の呼びかけに自分で驚いて、思わず笑って誤魔化した。


「あはは…」

「何だぁ…お前?」

電話帳をパタンと閉じて、清清しい晴れ間を見上げる。


「いつか、会えるよね」

「おう!絶対会わせてやるよ」




弱気な私も受け止めてくれる。

母の『遺志』を無駄にしないと、心に決めていたのに。



きっと一路がいなかったら、今、笑って過ごしていない。


そう、それは絶対に。