水に燃え立つ螢

『前に?』

「はい」

『ちょっと分かりませんが…』

「そうですか…突然すいませんでした」




そんな簡単に見つけられない。

見つかる筈ない。



母でさえ、死ぬまで会えなかったんだ。






「行こう」



一路が手を繋いで引っ張った。


何処に行って、誰に聞いたら分かるの…?


そんなの…分かんないよ…


母の手紙は父に届くんだろうか…



不安と焦りが胸を圧迫して、呼吸が乱れる。




「まだまだ、これからだぜ?」



一路が繋いだ手を、ブンブン振って私を見ていた。


「ちょっ…何で手繋いでんのよッ」

「ちッ!気付いたか」

「気付くわよ!!」

「あーうるせー」



『ありがと一路』



心の中で、そっと言った。


再びあの駅に戻る。若き日の母を追った。


離したくない手を離す辛さ。



涙が止まるまで、母は、どれだけの時間を必要とし、どれだけの時間を越えたんだろう…




この踊り場で、泣き崩れている母の姿が見えた。