水に燃え立つ螢

とりあえず着替えて一路と家を出た。


「で、何処から探すの?」

「おばさんの手紙に書いてあった住所は?」

「もう行ってきたの…でも表札が父さんの名字じゃなかった」

「家の人に聞いたか?」

「…ううん」

「なぁんで聞かねーの?」

「だって…」



ブラブラと休日ののんびりした街を歩く。



一路は言葉は悪くても、いつも優しい。

いつも何処からか私を見ていて、すぐに手の届く場所にいた。


ふと、少し前を歩く一路の横顔を見た。

強い眼差し。
ふいに振り向いて、私を確認する瞳。


ずっとずっと一緒に居すぎて、恋とか越えてしまってる。






そうしている内に、母と父が出逢った駅に着いた。

いつも何気に通っていた駅。

此処が父と母の、始まりと終わりの場所だったなんて…



改札を出て、一度見にきた家へと向かった。



やはり、表札は父の名字ではなかった。一路は周りをグルッと見渡すと、いきなりインターホンを押した。


「ちょっと!!」

「何だよ」

「何で押すのよ!!」

「聞いてみりゃいいじゃんよ」




『はい』


インターホン越しに女の人の声がした。

「突然すいません。以前、此処に住んでいた人を探しているんですが、何処に行かれたかご存知ないですか?」



一路は聞いたことのない口調で言った。