水に燃え立つ螢

私は、いつ父に会ってもすぐに手紙を渡せるように、父への手紙は持ち歩いた。


父を探すのは正直足踏み状態で、探し方さえ思いつかなくなっていた。



週末、仕事が休みの朝。

少し遅めに起床して、ベランダの花に水をやった。


秋の爽やかな風が、母の花を揺らす。



花が大好きだった母。

鼻歌まじりに、花の手入れをする母。



この部屋の何処をみても、母がいる。





騒々しくインターホンが鳴り出す。

この押し方は一路だ。



寝起きのままで玄関に向かい、鍵を開けた。



「覗き穴から見たか?」

「は?見てないから」

「見ろって言ってんだろ?」

「一路なの、分かるもん」

「んじゃ、次から一回しか押さねぇ」




クスクスと笑って、キッチンで珈琲を入れた。


「飲む?」

一応聞いてみた。

「とりあえず聞くなよ」

「飲むの?飲まないの?」

「いらない」




ソファーに偉そうに座っている一路の足元に座り、珈琲を口にした。



「今日、土曜日なんだけど」

「だから?」

「探さねぇの?親父さん」

「どうやって?」

「俺に…聞くな」



一路は笑って、私の頭に拳をグリグリ押し付けた。