「………ゼファ…。
離して……」
「嫌だ」
「痛いから離して……」
「嫌だ」
「………あたしを
怒らないの?」
「なんで怒る必要が
あるんだよ?」
「だって……
勝手に死んだし。
勝手にどっか行ったし…」
「もうお前に
待たされんの慣れてっから
怒る気も起きねぇな」
イセルナの手を引いて、
家へ向かった。
久々に会うイセルナは
すっかり大人の女に
なってるのに
やっぱり小さくて
やっぱり口答えばっかで
うるさくて
すぐ困った顔をする。
昔と同じで安心した。
ただ違うのは
ちょっとした外見と
少し弱気になってる所。
「ごめんね………」
「なんで謝るんだよ」
「寂しかった?」
「あぁ」
「心配した?」
「あぁ」
「悲しかった?」
「もういいよ。
何も言うな」
不安そうにイセルナは俯いた。
その不安を消す様に
俺はしっかり手を握った。
家に着く頃には既に
日は沈んでいた。
ドアを開けて暗い部屋に入った。
「何やってんだよ。
早く入れよ」
「………うん」
イセルナが俺の前から
姿を消して9年。
大丈夫だと思ってたのに
いざ顔を見ると
どう接していいのか
わからない自分が居た。
本当ならきちんと
おかえりと言ってやるべきだ。
そうすればこんなに
不安な顔はさせないのに。
「ゼファ………」
「…………!?」
「ゼファ……
会いたかったよぅ………」
どうしたらいいのか
わからないでいる
俺を察したかの様に
イセルナは後ろからしっかりと
抱き締めてきた。
腰に回る手が震えている。
この9年間、
ずっとどんな気持ちで
過ごしていたんだろう?
きっと俺と同じように…
いや、
それ以上に
不安で仕方なかったんだろう。


