好奇心が罪悪感に変わった。戦う為に造られ、そして役目を果たしたら散っていくのだろう。 それがこれから先彼女が生きていく理由………。



少し離れた場所からイセルナを眺めていたら、背後に野生獣が迫ってきていた。でも全く気付いていなかった。



「………あのバカッッ!」



………何が対神族用兵器だ。野生獣の気配すら感じ取れていない奴に『カミサマ』とやらと戦えるのか?俺は野生獣に襲われかけたイセルナを助けた。



「おっきいおとがしたー」



初めて聞く声。
初めて触れた体。
初めて感じた体温。
何一つ普通の子供と変わりなかった。不自然なのは棒読みな喋り方。



野生獣を斬った音に驚きを隠せずにいるらしいが、それも子供なら当たり前の事だろう。



「虎斬った音だろ?…ごめんな。あんまお前みたいなガキに見せたらいけない光景だな。音だけで見てないだろ?」
「うん。おとだけー」



そうだ。 俺とイセルナは今ここで初めて出会った。俺は何も知らない。………何も知らないんだ。色々と話して様子を伺いながら何も知らないふりをして、イセルナと接した。



「ねぇ!あたしもけんやりたい!とらきりたい!いっぱいきりたい!」
「……………………」



イセルナの一言で言葉を失った。あまり聞きたくなかった言葉だったからだ。デュランダルに惹かれたのか?単純に剣を使ってみたいのか…?それとも本気で何かを斬りたいのか?……戦いたいのか?正直ゾッとした。これが『兵器』の本能なのか?イセルナは剣の使い方をしつこく教えろとせがむ。とても普通ではない感じに。俺を師匠とまで呼び始める。………どうすればいい?