これが俺とイージスの出会いだった。一瞬でも奴に感心した俺が愚かだったのか……? 好奇心で近づいてしまった事が自分の死へのカウントダウンになっているとはまだ知るよしもなかった。



それから毎日イージスの家へ通うようになった。1日たりとも休まず毎日毎日ただ黙ってあのホムンクルスの少女を眺めていた。眺めていると時間の経過すら忘れてしまう程に見入っていた。



彼女はホムンクルス。元ヴァリーフォージの研究員イージスの手によって造り出されたホムンクルス。コードネームはIS-luna tipeA。ただそれだけの情報で俺は満足だった。見ているだけで……満足だった。



「なぁイージス。そういえばなんで、IS-luna tipeAっていうんだ?」
「IS。私の研究コード。luna。製作場所を意味するコード。tipeAはイージスの頭文字だ」
「………ふーん」



それから間もなくイージスはその実験コードを元に『イセルナ』と名付けた。名付けた事が彼女の覚醒を意味した。しかし、俺には覚醒を一切知らされなかった。



いつも通りにイージスの家へ向かう途中、俺とイージスしか居ない筈のこの山奥に1人の少女が無防備に立っていた。それはいつも暗い部屋でガラス越しに見ていたあの少女。………イセルナだった。ハニーブロンドの髪が風に靡き、今まで閉ざしていた瞼の向こうにはアンバーの瞳が悲しく輝いていた。とても悲しく……。彼女は一体何を思っているのだろう?何を思ってそんなに悲しい目をしている?初めて見る
『生きる』彼女に対して抱いた感情。それは何故か悲しいの他になかった。ただ、これだけは知られてはいけない。それは瞬時に俺が勝手に思った事。



イセルナは人間ではない。
ホムンクルスだ。



この人から造り出された悲しい存在にそれはまだ知られてはならない。知るにはまだ幼すぎる。………残酷すぎる。そう思ったんだよ。