翌朝、
お兄ちゃんは
異国のおっさんと
その部下達に連れられ
アルトルーシュカを発った。
その後ろ姿は
大きな希望と決意を
背負ったように見えた。



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あたしも学校を卒業した後、
お兄ちゃんを追うように
アークティクへ行った。
自分の持つ力を確かめに。
それかしばらくして
ブレダのおっさんは
アルトルーシュカに
ロンヴァルディア騎士団の
支部を置いた。
あたしはそっちに配属されて
結局は再びアルトルーシュカに戻った。
けどお兄ちゃんは
ブレダのおっさんが
アークティクの本部から
絶対に離さなかった。



お兄ちゃんがアルトルーシュカに
帰って来たのは
それから何年もして
アルトルーシュカがだいぶ姿を変えて、
奥さんと子供を連れて、
宝剣デュランダルを
手にしてからだった。



「全く音沙汰が
ないと思ったら………」
「びっくりだよねー」
「まさかあいつが
団長に治まるとはな」
「たぶんあのおっさん、
最初から
そのつもりだったんだよ。
あたしにすら
お兄ちゃんの情報は
一切流さないし」
「なんか置いてかれた
気分だなー………」
「あははッッ!
だってクレイトは昔っから
絶対にお兄ちゃんよりも
一歩や二歩は
先に行ってなきゃ
嫌なんだもんねー!?」


街を目的もなく歩いて回り、
あたしとクレイトは
お兄ちゃんの出世に
もの凄く驚き、
同時に少しばかりの
敗北感を味わいながら
ダラダラと休日を過ごしていた。
逆に父さんはもの凄く
お兄ちゃんの出世を
喜んでいたのは言うまでもない。
退屈すぎた日々を変えた
ちょっとした出来事。
それが壊れかけた
家族の絆を再び
繋ぎ合わせたのだった。