色々考えてるうちに
あたしも眠りに
ついていたらしい。



「………おい………」
「………………」
「ライア………?」
「…………んー?」
「ライア?
もう寝てるか?」
「お兄ちゃん…………?」



今夜もまた
帰って来ないかと思った。
お兄ちゃんは
小声であたしに声かけた。



「今おっさんに会って来た。
………俺明日には
アルトルーシュカを出る」
「…………え?」
「明日アークティクへ行く」
「……………もう行くの?」
「あぁ。
早い方がいい」
「……………………」



おっさんに返事をするのに
出ていったのか………。
お兄ちゃんの一言で
眠気が一気に覚めた。
けど明日だなんて。
あまりにも急すぎる。



「何年ぶりだったかな」
「何が?」
「親父とお前と
3人で話したのは………」
「わからない」
「だよな」
「だってお兄ちゃん
家に居ない事の方が
多いんだもん。
全員家に居るのが
珍しすぎるよ」
「色々悪かったな………」
「何が?」
「うん。
まぁ……色々だ。
お前には迷惑かけた。
ダメな兄貴で悪かったな。
これからは余計な事考えずに
気楽に暮らせ」
「……なんでそんな風に
言うの……?」



ホントにそうだった。
呑気な親父と
奔放すぎる兄貴。
いつも頭を悩ますのは
あたしばっかり。
だけどやっぱり
お兄ちゃんはお兄ちゃんだった。
居たら居たで迷惑なのに、
出ていくと言われると
寂しさが込み上げた。
涙が無意識に止めどなく流れる。
お兄ちゃんはあたしの頭に
手を乗せた。
小さい頃もよく
あたしが泣いていたら
こうやって黙って
泣き止むのを待ってたよね…。