今から20年位前、
この大陸中が
半壊滅状態になるほどの
大きな戦があったらしい。
信じられる?
相手はカミサマだって。
カミサマとの戦いに破れた
この大陸の人間は
高度な文明を
すべて奪われたそうだ。
あたしが今住むこの
寂れた世界。
若い人達はこれが普通だから
住むには不自由はないけど、
当時の傷跡がまだ
あちこにち残っている。
瓦礫も。
死者も。
死者の魂も。
不気味に街の中央に
そびえ立つ廃墟、
戦の原因となった
ヴァリーフォージという組織の本部。
今でもこのヴァリーフォージを
恨む人々は後をたたなくて
暴動が起きる事が多い。
軍の数が足りなくて、
治安の悪さは年々増していく。



この時代、
貧富の差が激しく
富裕層と呼ばれる人々は
みんな過去にこの組織に
所属していた人間ばかり。
あたしも両親が昔
ヴァリーフォージに居た為
そう呼ばれる人間の1人。



「ファルクスー!?
ライアー!?」
「…………………」
「おい!
居るのかー………って、
居るじゃねぇか」
「………………」
「居るなら返事しろよ!
ファルクスは?
どこ行った?」
「知らない」
「なんだよー…………
ちょろちょろすぐ
居なくなりやがって」
「で?」
「あぁ。
アレクトが呼んでんぞ?」
「またー?
別にあたしどこも
具合悪くないし」
「………いーから!
行って来い!」
「わかったよ!
行けばいいんでしょ!?」



父さんは男手一つで
あたしとお兄ちゃんを
育ててきた。
お兄ちゃんはもう卒業したけど、
あたしは富裕層だから
毎日きちんと学校へも
通えている。
友達にも片親しか
居ない人は多いけど、
うちはちょっと違う。
あたしは勝手にそう思っている。
母さんはあたしを
産むのと引き換えに
命を落とした。
あたしが居なければ
死ななくて
済んだのかもしれない。
家族の誰も口にはしないけど、
みんな母さんが居なくなったのは
それぞれ自分のせいだと
思っている。