「生きる事は
死ぬ事よりよっぽど
難しいね………」
「?」
「昔死んだ時は
あまりにもあっけなかった。
あたしはかなり自信過剰だった。
あんな戦場に出たって
自分は死ぬわけないと思った。
目の前で兵士が何人も
殺られて、
あいつらは軍の恥とすら感じた。
けど自分はもっと
恥さらしだったな。
ずっと味方だと思ってた奴が
神族のスパイだった事も
見抜けないで
相手に一撃も食らわす事なく
あっさり殺された。
生まれて初めて味わう
挫折だった。
その後も姿形が変わってまで
生かされ続けるのが
苦痛でしかたなかった。
ゼファに会う自信もなかった。
ホント今もね、
………戦うって行為が
恐くて仕方ないんだ。
またあっけなく
死ぬんじゃないかって
不安なんだ…」
「だったら………」
「おとなしくしてるよ」
「ありがとう……」
「でも……、
あたしもうあっけなく
死ぬのは嫌だ。
何もしないで死ぬのなんて嫌だ」
「そりゃずっと
家に籠ってるのは
退屈だとは思うけど……」
イセルナは俺を抱き締めた。
たぶん今の精一杯の力で
抱き締めてきたのだろう。
でももうすでに
昔の様な力強さのかけらも
感じる事ができなかった。
それはあまりにも重かった。
これを俺に気付かれないように
隠し通すのも
楽ではなかっただろう。
つくづく自分が嫌になった。
何故俺はいつも
イセルナの変化に気づかない?


