伽羅子

突然、背後で音が聞こえた。

何かが落ちてくる音。

例えるなら、湿り気を帯びた肉の塊が、高い所から転がり落ちてくるような音。

「……」

煙草を銜えたまま、俺はゆっくりと振り返る。

…既に薄闇にに包まれた校舎の中。

その踊り場。

然程広くないそのスペースに…這いずる影があった。

長い黒髪を、凝固し始めた血で頬に、首筋にはり付かせ、その髪の隙間から白目を剥いて、俺を凝視している。

小刻みに震えながら、床を這う姿。

『彼女』が這いずる度に、床に血の跡がなすりつけられていった。