詩織が心配してたとおり、週末のカラオケはそれなりに混んでた。
カウンター越しの店員が、順番待ち用のシートをオレたちに差し出して。
「30分ほどで入れると思いますので、こちらのほうにお名前と…。あ、ユウじゃん」
「え?」
そこで出会った、ユウの中学時代の先輩とかいう奴。
こいつのせいで、オレとユウの距離はもっと遠くなる。
ううん。まだこの時なら、オレは自分の力でそれを止めることもできたかもしれない。
でも、始めてしまったゲームは、そう簡単には止められなかったんだ。
「あ、これやろうよ。亮ってこういうの得意でしょ」
ぬいぐるみの詰まったクレーンゲーム。
なにげもなく詩織が言った言葉も、ユウにしてみれば彼女のおねだり的なもの。
たぶん詩織は、そんなことも忘れてただ普通に言っただけだったんだろうけど。
「ね、ユウ!ユウもこのキャラ可愛いからずっと好きだったよね」
「え…。うん」
ちゃんと知ってた、そんなことも。
オレだってずっとユウと一緒にいたんだから。
もちろん二人きりなんかじゃないけど、いろんなとこ遊びに行って、いろんなこと話して。

