『行かないで』 さっきから何度も何度も そう呟く―― クラスのやつには教室の雑音のせいか、全く聞こえていない ―――しかし 彼女の声は 次第に大きく 次第に鮮明にはっきりとした口調になってきた。 さすがに、これは誰か気付くやつが出るだろう。 きっと、 こんな寝言を聞かれた 彼女は焦って、戸惑って、 とんでもない言い訳で、みんなを誤魔化そうとする必死な彼女の姿が容易に想像することが出来た。 彼女の言葉を聞くのは おれだけでいい―― ―――なんとなく そう思った。