車は山道をしばらく登った民家の前の空き地に停車した。



『うわー‥』



声が出なかった。



180度に広がる綺麗な夜景が広がっていたからだ。


小さな光の粒が重なり合い結晶となる。



山の暗さに対象的に遠くの光と星が明るく輝いていた。




『はい。』



ヒロはぶっきらぼうにあたしに小さな黒い包みを渡した。



『何これ?』



『クリスマスプレゼント』


『嘘!?』



震える手で焦りを押さえながら、包みを開いた。




布の袋の中に百合の紋章を象った少しゴツめの指輪が出てきた。



『ありがとう。』



指輪はあたしの薬指にピッタリだった。



『俺さ、この前一人で考えてたんだけど‥』


『ん?』



『お前がいて、子供もいて‥そういうのも悪くないんじゃないかなって思ったんだよね。』



ヒロ…?



『…うん。』



それって‥




もしかして‥





『俺、金ないけど、実家住んでいいって言われたし‥結婚しない?』




『う‥ん。』



あたしは何も考える間もなく、返事を口にしていた。



考えるまでもなく、あたしの心は決まってたんだ。