「はいはい、静かにしましょうね」

 トントンと教卓を叩きながら‘担任’の倉田(くらた)先生が言う。
 すると、少しずつだが雑談が減って教室内が静かになった。

 この人、なかなかやるな。

「では、みなさん。新しい二人のクラスメートさんにも、色々と教えて上げてくださいね。
 昨日来た、金ケ崎さん共々ですよ」

 …なる程。
 先程の騒めきの原因(の半分)は、二日続きで‘転校生’が来た所為か。
 倉田先生の話で、私はそう理解した。

「それでは質問ある人は?」

 優しそうな笑顔で、倉田先生は静まった生徒達に訊ねる。

『………』

 教室内は、先程と違って静まり返っていた。
 誰も発言しない。

 …何か、失敗したか?
 潜入早々なのだが…。

 私は一瞬だけ隣にいる隼人に目線を向ける。
 彼は相変わらず無表情だが、目線で大丈夫だと返してくれた。

 まぁ、隼人がそういうなら大丈夫だろう。
 隼人と空箭達は一度人間界に来た事がある。
 初めての私の感覚よりも信頼出来る。

「…ないようなので、席につきましょうか。
 翼くんは窓側の一番後ろから二番目で、剣さんはその後ろよ」

 静かな教室に、倉田先生の声がより一層大きく聞こえる。

 やっぱり、何か変じゃないか?
 本には、授業中以外の生徒がいる学校内は、とても騒がしいと書いてあったんだが…?

 そんな事を、私の前を通って席に向かった隼人の後についていきながら、私は考えていた。

 隼人が席に座り、私も後ろの席につく。
 教室内の全員が私達の動向を見続けている。

 やっぱり、ばれているか?
 この人達も、やはり…。

 ふと、何となく横を向くと、この島国では珍しい茶色の髪と瞳を持つ少女と目が合った。
 彼女は、目が合った事に少し驚いた顔をする。

「よろしく」

 私は、取りあえず笑顔で挨拶をした。
 笑顔と挨拶は大事だからね。

            09/03