一年間の留学の話。




趣味でやっていた語学が、活かせる。

かもしれない。


と聞いて、心が浮き足立つのを止められなかった。

ヘンピな場所で、連絡もままならないそんな所だというのに。


両親や、宮越の小父さん小母さんと、毎日話をして、考えて。
そうして出した答え。
一週間後の今日、放課後に留学の話に YES か NO かの、返事を伝えに行く。





教室から一緒に昇降口までとなりを歩く高原を見る。

「高原。」

パッと振り向く彼女の笑顔が、ふんわりと暖かい手のひらが、指通りの良い髪が。
そして、恥ずかしがり屋の君が。

本当に 好きなんだ。



きっと俺は、ヒドイ男なんだろう。


自分でも思う。

けれど、ずっと考えても出てくる答えは、一つだけ。


「…高原。…ごめんな、…急だけど…。」


息を吸って、…手が少し震える。



「俺、もう…付き合えない。」