ここの家では、二十歳までは寝る時以外、自室の扉を閉めてはいけない決まりがある。

例え友人等が来ていても、だ。


長男の晴利さんと次男の柾希さんは、2人共ドアを外してカーテンか暖簾をかけていた。

三男の芳典さんは、部屋の内開き戸を45度の角度にドアストッパーで開けていて、映樹はドアを全開にしている。


小さい頃から見慣れた光景。
ちょっと変わってんなー、とは思うけど、俺も引き戸の扉を開けている。

案外と違和感は無い。


それよりも勉強のレベルがグッと上がって、部活後に机に向かうと眠気が襲ってきて負けてしまう方が、困る。



コンコン

軽いノック音に、ハッと意識が戻って、眠っていたのかと焦る。

「なんだ、寝てんのかよ。」

返事も聞かず映樹が入ってきて、床にドッカと座りこんだ。

「…ちょっとウトウトしただけだ。」

「同じだよ。」

その物言いにムッとすると、何故か映樹もムッとした表情で俺を睨んでくる。

「おい、一度も出掛けてねーって、どーいうこったよ。」

「急に何の話だ。」

「早苗だよ。オメーら2ヶ月も経ってんのに一回もデートしたこと無いって?」


うっ…。

「…なんで、知ってんだ。」

「ドあほう!誘ってどっか連れてってやれっ!」


怒鳴り言い捨てると、足音も荒く、映樹は部屋から出ていった。