あれから、コート無しでは寒過ぎる季節になった。
学校で自習学習をしていたから遅くなってしまって、急いで校舎を出る。
寒いし、薄暗いし、正直心細い。
さっき遠慮しないで弥生達と一緒に帰れば良かった…。
後悔先に立たず。
…ホントだよ…。
「あれ?もしかして、…高原さん?」
名前を呼ばれて振り替えると、男の子が立っていた。
…あれ?えええ?!
「…ほ…穂杉…くん?」
どうして…。
「「ここで、何しているの?」」
同時に同じ質問を口にして声が重なった。
恥ずかしくって俯いてしまう。
でも…覚えていてくれたんだ!
「私…は、学校の帰り。」
「あ、そっか。…俺はあっちの病院の帰り。」
定期健診なんだ、と笑う穂杉くんは、横の壁の向こうにある校舎を見上げて、それから自分の後ろの方に見える別の建物を指差す。
あれはえっくん家の病院だ。
「どこまで行って帰るの?」
「えっと、駅まで。そこから電車なの。」
「ふーん、俺はそこからバスだけど、なら駅まで一緒に行く?」
えっ!えええ?!
「い…いいの…かな?」
「あ、彼氏なんかに見られたら…マズイ?」
か…彼氏なんか、いないもん!
首を横に振って、きっとすごく真っ赤だけど。
「だ…大丈夫です。」
「そう?じゃ、行こうか?」
歩きだす穂杉くんの、横に並ぶように歩く。
これって、あれだ。
棚からぼた餅
…だ…すごく嬉しい。
