「もうこれ以上、逃げないでくれる?」
弥生に話がある、と言われて避け続けて数日。
とうとう圭吾に首根っこを捕まれ、弥生に差し出されてしまった。
放課後の空き教室に3人。
仕方なく映樹は近くの椅子に座る。
と、弥生は正面に立ち、圭吾は少し離れた机に腰掛けて、2人を等分して見ている。
「早苗に何言ったの?」
「…何って。」
「ずうっと変なの。嫌がらせがピタッと止まった頃から。何言ったの。」
聞かせる気のなかった言葉を聞いて、混乱していることは想像に難くない。
そんなことできれば、言いたく無い。
映樹はちょっと考えるフリをする。
「…変って?」
弥生は一瞬躊躇う気配を見せたが、視線を映樹から外すことなく話し出す。
「…穂杉君が居なくなった時とは、ちょっと違う落ち込み方してる。
哲学的な事考えてるみたいな印象。深海に潜ってるみたい。」
と、実に抽象的な説明をしてくれた。
