しゅーん、と肩を落として、また目を擦った。

「もう疲れたか? それとも腹減ってるとか、寝不足とか」
「ぜんぶー……」
まさかの全部だった。

「隣が神崎くんになったから、ちょっとはしゃぎすぎたかなあ」

……!
これは……!
世に言う脈ありか?!

 「唯谷ちゃんと同じ班だし、空知くんも面白いし……うーん、笑い疲れ……?」

ち、違ったか。
笑い疲れって何だ。

「暫くおやすみなさいする……」
「じゃあ弁当の時に起こす」
「四時間目は移動教室なんだ……よ……」

ごっ、と雛森が頭を机に打った。本当に寝たようだ。
 隣が俺じゃなかったら、他の奴に雛森の寝顔を見られてたかもしれない。
いや、俺だったから寝たのか、とか自惚れてみた。

 「天、何でにやけてんだよー」と昴が訊いてきたが、俺は「別にー」と然り気無く雛森の顔を手で隠した。

    ◆  ◆  ◆

 「飯だー!」(←昴)
「ごはんだーっ!」(←雛森)
「…………」(←呆れる俺)
「ふふっ」(←笑う唯谷)

 四時間目が終わり、弁当の時間になった。みんな大好きお弁当。

 「……ん?」
なんとなく俺の目に止まったのは、雛森の体操服の裾。
今更気付いた──その裾の長さが、十センチ程余っていた。手が出ていないのだ。
「雛森、長くねえか、それ」
「あ……ほんとね」
唯谷も同意する。
「うん、冬でも寒くないよー」
にこにこしながら答えやがった。
やっぱよく解らん奴だな。
「さー、早く食べよーぜ」
「わーい、いただきまーす」
子どもみたいに無邪気に手をあわせて、雛森が言った。
 「わあ、唯谷ちゃんのハンバーグ美味しそうなんだねっ」
「ありがとう。そう言ってくれたら嬉しいわ」
「うん? 唯谷、自分で作ってたりするのか?」
「ええ、母の真似事だけどね」
「自炊かー、偉いねえ唯谷ちゃん。わたしがやったら事件になっちゃうよ」
自炊。
イコール家庭的女子。
昴の目が輝く。

「雛森、家庭科の時は隅っこで居てくれ……」