しとしとと小雨の落ちる放課後。どこまでも広がる重たい曇り空の下には、色とりどりの雨傘と咲き始めたあじさいが並んでいる。
 本日最後の授業は移動教室だった。帰りのホームルームを終え、友人たちに連れられていざカラオケへというところで、音楽室に携帯電話を忘れたことに気がついた。
 手元にないならないで構わない気もしたが、なんとなく落ち着かない気持ちは拭えない。友人らのブーイングに苦笑いを返しつつ、結局俺はもと来た道をのろのろと戻ることにした。
 いま思えば、これが俺たちの今後を左右する大きな分岐点となったわけだ。