土煙りと、僅かに鼻をつく血の匂い…

それと、頬を伝う生温い感触に気持ち悪さを感じ、目開けた。



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私の目に飛び込んできたのは、大勢の人が剣をかわし、逃げまとい、倒れ込む姿…

叫び声と泣き声の中、私の前に立ち塞がる上から下まで真っ黒な甲冑に、紅のマントを羽織った大きな影。

『な、な、な……』

突然の状況に、言葉が詰まり出てこない。

ゆ、夢???

なんてリアルな……


『おい!!聞いているのか?立て!!早く逃げるんだ!!!』

電撃が走るような大きな声で怒鳴りつけると、その大きな影は私の腕を荒っぽく掴む。

『いたっ!…痛いっ!』


その大きな影と、私の距離が近づく――と、一瞬、目が合った気がした。

『……お前…、この前の…』


は?私は貴方のようなごっつい…その前に、蒼い瞳の方に知り合いはいませんが…??

この状況で考える事じゃないんだけど、まぁ、夢なら…ねぇ


『そこかぁ!!!』

突然聞こえた声に目を向けると、何メートか先に光る弓と、獲物を捕らえたかというような鋭い目の男。

その弓は、確実に私達を狙っている。

『―――っ!危ない!!!』

背筋を伝う嫌な汗。

私が叫ぶと同時に、どすっ…と響く嫌な音。

男の放った矢は、真っ黒なその影に赤い筋をつけた。

『くそっ!!!』

その影は小さく唸ると、顔をゆがませる。

私を庇ったその腕から、どくどくと流れる真っ赤な血。


その血は私の腕まで到達し、生温い血が、私の腕を赤く染める。

『い、い、嫌ぁぁぁぁぁ!!!』

例え夢だと思っていても、あまりにもリアルな目の前の光景に、私は意識を失った。