『……これを。』
異様に明るい月の光が、窓から入りこんで、ジャスミンの口の中で光る小さな物体を照らした。
優しくその物体を口から落とすと、鼻先で私の方に差し出すようにした。
『これは…なに?何かの種?』
淡く光を放つ小さな白い塊。
『美琴にしか扱えない貴重な物だ。お前が決断した時、初めて意味のある物に変わる。』
―――またっ!!
頭にカーっと血が上るのがわかる。
『きちんと説明してよ!!さっきから何にも理解できないし、抽象的すぎるよ!!一体なんなのよ!!』
訳のわからない怒り …どこにぶつけていいのかわからなくて、声を張り上げた。
『悲しませてすまない…。泣かないでくれ。』
困った顔で私を覗き込むジャスミンから、視線を逸らす。
『じゃあ、じゃあ…はっきり言ってよ…。わかるように…。』
涙を拭いながら、次の言葉を待った。
だけど……
『私が仰せつかったのは、お前を護る事だ。すまないが、この先は…我等が王から直接聞いてもらう事になる。申し訳ないが、あちらの世界へ戻ってもらう。時間がない。』
曖昧なジャスミンの言葉が気に入らなかったのか、ただ真実を知りたかったのか。
とにかく、どうにかしていたんだ。
あの場所に、もう一度戻る事を承諾してしまったんだから――――。
