『美琴、私と出会った時の事を思い出せるか?』
首を横に振った。
あの騒動の中、考えてはいたけれど思い出せなかった。
『だろうな…。記憶にないのも間違いない。ほんの数日前の事だからな。』
『え?』
数日前って…
いつ、どこでとは思い出さないけど、もっと長くいる気がしていたのに。
『ちょっと待って。数日前って…。どういう事?』
頭の中がまたぐるぐるしてきた。
全く状況がのみこめない。
『もう少し、時間をかけて美琴に考える余裕を与えたかったが…。まさかこんなにも早く動き出すとは思ってもいなかった。』
ジャスミンは深い溜息をつくと、私から視線を逸らし、窓ごしに月を見つめる。
『わ、私はなんなの?どうしてこんなになってるの?』
声が震える。
だけど早く、真相を知りたくて…。
『……王の命令により、私はここにきた。出会ったのは、お前が鏡の中に吸い込まれたあの日だ。美琴…お前は、あちらの世界を救える唯一の希望だ。だが、就く場所により破壊へと導く闇にもなる。向こう側へ、破壊者とならない為に、私が任命された。』
こ、んな…こんな妄想的な話…信じられない。
なんで私なんだろう。
あまりにも抽象的すぎて、話自体もだけど自分の存在もあやふやだ。
『それじゃわかんないよ…。』
どうしていいのかわからなくて、不安と恐怖で涙が溢れてくる。
大粒の涙が次から次にボロボロと流れて、目の前が霞んで見えない。
