――ポタッ…


ポタッ…





身体のあちこちの小さな痛み。


徐々に戻る意識


冷たい雫が私の頬を濡らしている。

うっすら開けた私の目に飛び込んできたのは、どこまでも続く高い木々の集合。

その間から光が洩れ、雨の後なのだろうか?木々の葉は艶やかにみな濡れていた。


ぼーっとした頭を、横に振って、その状況に馴れようと努力する。


『どこなのよ?』

『なんなのよ~~~!!!!!』

幾度となく続く不可解な出来事に、どこにぶつけていいのかわからない怒りが、一気にこみあげてくる。


泣きたくなってきた…

本格的に私、変になっちゃったの?

も、もしかして、多重人格で、もう一人の私がここまで歩いてきた…とか???


いや、ありえない。


だって、周りの木々は、見た事のあるような感じで全く違う。


幹は茶色で葉っぱも緑…

でもこの違和感を感じさせるものは、揺れる葉っぱの一枚一枚。

恐る恐る立ち上がると、よく目を凝らしてみる。



!!!!!!!!!


手を伸ばし、一枚の葉っぱに触れた瞬間、あまりの驚きに私はまた後ろへひっくり返りそうになった。


「なぜ帰ってきてくれないの?」

「寂しくて死んでしまいそう…」


これ、雨の雫じゃない!!

一枚一枚の葉っぱか伝わる、人々の感情。

寂しい、辛い、悲しい…

耳に聞こえてくるんじゃない、身体に流れ込んで、全身に染み渡る感じ。


泣いてるんだ…

葉っぱの雫は涙…

耐えられなくなった私の目から、ポロポロと落ちる大粒の涙…

『帰りたい…』