『じゃあ行くぞ』
男は盆を持ってその場を立ち去ろうとした。
『まって』
男の足が止まる。
『どうした?まだなんかあるのか』
男は面倒臭そうに振り返った。
『…あんたさ
人間じゃないでしょ』
『……!!』
唐突な質問に男はたじろいだ。
女はニヤリと笑う。
『やっぱり、図星なんでしょ。
で、あんたの名前は?』
『俺…。俺は…』
ダンッ!!
とてつもなく大きな声が聞こえた。
『何だ?』
男と女はその声に耳を傾けた。
『カンク!この山には一般庶民どもを入れるなと言っただろう!』
『も、申し訳ございません頭っ。すぐに仕留めに参ります』
『そういう問題でもない!…でもまあよかろう。どうせ、娘二人にラピ族のうさぎが二匹だ…
大したこともない。必ず仕留めるのだぞ?よいな』
『はっ!』
『どうやら、侵入者がいるみたいだな…』
『……』
女は黙って何かを考えていた。
『おい、いきなり黙ってどうしたんだ…『シッ!』
奥の方からカツカツと足音がする。
女は声を潜めて言った。
『…誰かが来るわ。
もう一度聞くけど、あんた、名前は?』
『俺は…
ギルガード』
そう、と女は微笑んだ。
『ギルガード、少しだけ手を貸してほしいの。もし成功したら、褒美でも何でもあげるわ。だから、今から言うことをよく聞いて』
ギルガードは女の目をじっと見ると、コクンと頷いた。