「ううん、違うよ。怪我はしてるけど、今のじゃなくてたぶん…落ちた時のだから。」
気にしなくていいよ。そう言おうと思って口を開きかけた時、
「どこ!怪我したとこ。」
「えっ…、肩かな。」
言うつもりなんてなかったのに心配です!っていうのが言葉や表情からすごく感じられて、嬉しくて、つい言ってしまった。
その間、猿君は悩む素振りを見せた後
「まぁいっか、付いてきて。」
そう言って歩いて行く。
えっ…と、どうしようか。いい人だよね。だったら尚更付いて行けないよね。
「あの、助けてくれて本当にありがとうございました。じゃぁ。」
じゃぁ、そう言った瞬間から私の頭にはどこへ逃げるかでいっぱいになった。
後ろに振り返って歩き出して数歩後
ガシッ
腕を掴まれた。
ん???
振り返るとちょっと悲しそうな顔の猿君がいた。
「手当てするだけだよ。」
「…」
何て言ったらいいか分からずに黙り込む私。
「ヤバそうな人に見える?」
「そんな!助けてくれた上に手当てまでしてくれようとしてる人が悪い人だなんて思いません。」
