が、あと少しで芦多に届くというところで、前に女達が立ちふさがった。



格好からして侍女だろう。



嬉しそうに芦多に話かけている。



「芦多様ぁ。」



ピタリと灯世の足が止まった。



芦多?



この人はいくつ名前を持っているんだろう。



「試合、頑張ってくださいね。」

「あたし達、みんな芦多様を応援してますから。」



キャッキャッと黄色い声を上げる少女達が静かになった。



何事かと思っていると、垂れ幕の間から綺麗に着飾った少女が現れた。



房姫様、と中の誰かが呟く。 



今までそっぽを向いていた芦多も驚いて彼女を見ている。



シャラシャラと音を立てて歩く彼女は、きっと自分より年上だ。



どことなく余裕めいて見える。



「芦多。」


「はい。」



芦多が硬い表情のまま、房姫に向き直る。



「私も応援しているわ。」


「有り難き幸せ。」



芦多は言って、頭を下げた。