この空の彼方

得体の知れない自分と話して楽しいものか、といささか疑問にも思うが。



「最近、お見かけしませんでしたね。」



少しの沈黙の後、灯世は芦多をみずに言った。



「あぁ、少し勉強が…。」



実はまたもや辰之助の代わりに授業に出ていたのだ。



「そうですか。」


「灯世は最近どうだ?」


「私、ですか?」



うーん、と考える素振りを見せ、灯世は言った。



「特に変化はありませんね。
ただ、母様にこの間一度会えました。」


「そうか、よかったな。」



そういえば、八重様は地方に出向いていたんだった。



この国も、危なくなってきたな。



「そういえば、灯世は結界を張れるようになったと聞いた。」


「簡単なものですが、やっと自力で。」



灯世は恥じ入って、眉根を寄せる。



「まだまだ力不足で…。」


「いや、努力の賜物だろう?」



少し哀しそうに微笑んだ灯世が急に大人びてみえた。



「また、会おうな。」



言うと、灯世は満面の笑みで答えた。