この空の彼方

「あぁ、灯世は知らなくていいよ。」



灯世は怪訝そうに芦多を見たが、頷いた。



「まあ、とにかく灯世殿は対決をみられるさ。」


「嬉しいです。」


「こいつは強いですよ。」



待ちきれない、と顔を綻ばせる灯世につられて、芦多も笑った。



「さて、わしはもう行きます。」


「わかりました。
お話できてよかったです。」


「こちらこそ。」



去り際、政隆は芦多に不器用に片目をつぶってみせた。



はいはい、という意味を込めて頷く。



政隆がある程度遠のいてから、芦多は灯世の腕を取った。



驚いて自分を見上げた灯世を愛おしく思う。



「少し歩くか?」



灯世は嬉しそうにふわりと微笑んだ。



「悪いな。」


「何がですか?」


「名前のこと。
いつもそれが心に痛い。」



気にしないでください、と灯世は言う。



「何か、重大なことを任されているんでしょう?
こうやって話せるだけで私は嬉しいです。」


「そうか。」