この空の彼方

照れる灯世を励ますように、政隆は芦多の頭を思いっきり引っ叩いた。



「いっ…!?」


「名前を隠しているこの馬鹿に名前をつけてくださるなんて、嬉しい限りです。」



頭を抑える芦多を目を丸くして見つめる灯世。



政隆は1人喋っていた。



「あ、あの、頭…。」


「大丈夫だ。」



ムスッとして答える。



灯世は慄いたように乗り出した身体を引っ込めた。



またしくじった…。



灯世は俺の態度をみて、怯えている。



確かに、自分でも最初に会った頃と態度をかえすぎたと思う。



芦多はつとめて優しく話しかけた。



「灯世は最近よく散歩をしているようだな。」


「はい、風がだいぶ冷たくなくなってきたので。
秋人様は何をしていらしたんですか?」


「あ~…。
稽古だ。」



稽古、と灯世が反芻する。



「今日は政隆に槍を習っていた。」


「槍ですか!」



ぱあっと顔を輝かせる。



灯世は武術に興味があるのか?