この空の彼方

大変だ、このままだと俺の名前を政隆が口にしてしまう!



芦多は仕方なく起き上がって、2人に近づいた。



「おお、やっと来た。」



政隆は上機嫌で芦多を手招いた。



「こいつはわしの教え子でな、芦…。」


「灯世は既に私の名を知っている。
灯世がつけてくれた。」


「は?」



政隆はわけがわからないと言う顔で芦多を見上げた。



灯世はというと、目を丸くして芦多を見上げている。



「…久し振りだな。」


「お久し…振りです、秋人様。」



政隆は芦多と灯世を交互に見比べた。



「灯世殿、秋人…?」



芦多を指差す手を払い、耳元で囁いた。



「本当の名は、もし俺が影武者になったときに備えて明かしていない。」


「おっまえは…。」



変なところが用心深い、と政隆は顔をしかめた。



「で、お前は秋人か?」


「灯世のくれた名前だ。」



ほお、と政隆は灯世に向き直る。



「灯世殿、なぜこやつに秋人と?」


「秋生まれだと仰ったので…。
そのまま…。」