この空の彼方

「どうしても無愛想になってしまうんだ。」


「あの子も可哀想に。
灯世殿もお前に嫌われたのではないかと肝をひやしておるぞ。」



よし、と政隆は膝を打って立ち上がった。



「何だ?」


「わしが声をかけてみよう。」



それを聞いた芦多は泡を食って政隆にすがった。



「止めろ、政隆!
何をする!」


「わしが縁結びをしてやろうと言っておるのだ。」



何が気に入らん、だと!?



全部が気に入らないに決まっている。



「待て。
余計引かれたらどうする?」


「当たって砕けろという名言を知らんのか可哀想な奴め。」


「まだ砕ける段階まで関係を築いていないんだ!」



政隆は脚に絡まりつく芦多をズルズルと引きずり、角を曲がった。



「ほれ、いい加減諦めて立たないとその無様な姿を灯世殿に見られるぞ。」


「政隆が引き返してくれれば双方にとって一番いいんだ!」



話を聞いているのかいないのか、政隆は意味もなく笑って再び歩き出した。



ああ、もう終わりだ…。



芦多は諦めて政隆の脚を放した。



引きずられた格好のままべたりと床に突っ伏す。



これは、俺も出て行ったほうがいいのか?



顔だけ上げて政隆をみると、もう既に灯世に話しかけたあとだった。