この空の彼方

「おぉ、丁度来なすった。」



政隆の視線の先をみると、灯世がゆっくりと歩いてくるところだった。



「灯世…。」


「まったく、お前は今どれだけ自分が情けない面をしているかわかっているのか。」



呆れ気味の政隆の声も耳にはいらない。



そろそろ暖かくなってきたからか、この頃灯世はよく外に出てくるようになった。



「お前、よくあの子と話すのか?」


「いや。
もう、大分まともに顔をあわせていない。」


「大分って…。
お前、あの子とどこで知り合った?」



そういえば、政隆には何も話していなかった。



芦多は気持ち良さそうに日光を浴びている灯世を目で追いながら、会ったときのこと、灯世が倒れたときのことなどを話して聞かせた。



「ほうほうほう。
お前、なかなかいいきっかけを持ったな。」



助けてもらった負い目があるから、ある程度は親しくなれるぞ。という図々しい言い分は聞き流す。



「話からすると、あの子もお前に好感を持っているようなのに、何故話さない?」



痛いところを突かれた。



というか、ほとんど千歳のせいだ。



それから芦多は饒舌になって、千歳に対する恨みつらみを吐き出した。



失礼なことに、政隆は思う存分腹を抱えて笑った。



「まったく、お前は可愛いなぁ、芦多。
千歳如きに嫉妬か。」



また政隆は笑い出した。



…向かいの灯世に聞こえるのではないか。