「ん?」


「そろそろ帰りましょうか。」


「はいよ。」



千歳は一度手を打って、歩き出した。



「付き合ってくださってありがとうございました。」


「いーえ、こちらこそ。
また行きたくなったら誘ってね。」


「はい。
今度は是非秋人さんも一緒に。」



嬉しそうに顔を綻ばせる灯世をみて、千歳も自然に笑った。



「ねえ、なんかアイツと仲良さそうだよね。」


「アイツって?」


「秋人。」



千歳は呼びなれない名前を口にした。



「そう・・・ですか?」


「俺らが君を見つけたときが初対面?」


「はい。」



ドキドキしながら灯世は答えた。



変に思われた?



灯世にはつらい沈黙の後、千歳は「ふーん」と呟いた。



「どうしてそんなこと訊くんですか?」


「なんとなく。
やけにアイツにかまうなって。」


「そうですか?」



しまった、今度から気をつけなければ。



灯世は着物の裾をギュッと握った。