どうやら蹴り飛ばされたらしい腹部の痛みにうめき声ながら、芦多は立ち上がった。



これくらいのことで体制を崩しているようでは、話にならない。



もっと踏ん張りを利かせてみよう。



いや、身体をしならせて動きに対応した方がいいのか。



芦多は頭を抱えた。



ドサリ、と白い砂がまかれた稽古場に座り込む。



自分の欠点を補う何かを見つけなければ。



まだ自分には十分な力がない。



筋力をカバーするものは何だ?



ふと目に入った、飛び跳ねるようにして駆けてゆくリスをみて思いついた。



瞬発力だ!



人間を見つけ、瞬時に飛びすさる瞬発力だ!



すばしっこさなら、子供だから負けない。



このまま、バネを伸ばしていけば、大きくなった時にも武器として使えるだろうか。



芦多は一人頷くと、パッと立ち上がって駆け出した。



そのまま政隆の部屋まで走り、断りもなく障子を開けた。



「政隆!」



スパンッと音を立てて開いた障子を驚いて振り返った政隆は、そこに立っている芦多を見てまた驚いた顔をした。



「私は、瞬発力を武器にするぞ!」



キラキラと顔を輝かせる芦多を見やり、政隆は息を吐いた。