この空の彼方

今まで消えていた音が戻ってくる。



蛇儒の叫び声が、耳を貫いた。



「違う、違う!
姫を殺したかったんじゃない!」



殺したかった?



芦多の身体から、血の気が引いた。



まさか、あの術…。



生きて…いるよな?



しかし、芦多の期待を裏切るかのように、灯世は起き上がらない。



どうして?



疑問が頭を回る。



どうした、灯世。



起き上がれ。



そうは思いながらも、芦多自自身、身体が動かない。



視覚と聴覚だけが、機能した。



灯世、起き上がれ。



ぐっと、手に力を入れる。



芦多は這うようにして、灯世に近寄った。



「灯世?」



揺さぶるが、動かない。



どうして。



「灯世。
逃げよう。」



と、ぐいと身体が持ち上げられた。



「離れろ。」



蛇儒の濁った目が、芦多を射る。