この空の彼方

「殺してやる。」



え?



芦多は、何かいやなものを感じた。



それは灯世も同じだったようで、灯世の身体が強張る。



次の瞬間、灯世がつんざくような悲鳴を上げた。



刹那、目の前がくらむような閃光に包まれる。



そして、鼓膜が破れるかと思うほどの爆音。



灯世が間一髪張った結界の外では、草木がなぎ倒されていった。



灯世が歯を食いしばっているのが見えた。



「大丈夫か?」


「はい、なんとか。」



二人を包んでいる結界が、歪んだ気がした。



「…持ちこたえられるか?」


「はい、多分。」



何も力がない芦多は、灯世に任せるしかない。



歯痒かった。



「殺す…。」



芦多を睨む蛇儒の目が、不気味に光っている。



どうして自分を睨むんだ。



なぜか、敵という憎しみだけではない気がしてならない。



「姫は、わしがもらう。」


「え…。」



灯世が気味悪そうに、蛇儒を見返した。



「いらん虫は、わしが除去する。」


「…この人、どうかしてる。」



心底気味悪そうに、灯世は言った。



芦多も同感だ。



「そのためなら、禁忌を犯すこともいとわん!」



蛇儒が、手を下ろすと、灯世も息を吐いて力を抜いた。