この空の彼方




***



怖い。



芦多は率直にそう感じた。



この前、蛇儒と会ったときより、格段に迫力が増している。



「灯世。」



呼んでみるも、聞こえないかのように無視された。



もしかしたら本当に聞こえていないのかも知れないが。



風に髪を遊ばせているのも、恐怖倍増。



そう感じているのは蛇儒も同じようで、今のところ、蛇儒は術を使おうとしない。



「芦多様に、近づくな。」



そう言う声も、いつもより低く、知らない人間のように聞こえる。



芦多は黙って引き下がった。



「無理だ。
わしらは敵同士、殺し合いが仕事。」


「そんなの、聞いたことない。
私達は、ただ静かに暮らしていたいのに!」



灯世の絶叫がこだます。



「わしなら、その願い、叶えられるぞ、姫。」



蛇儒がそう言うと、目に見えて灯世が怯んだ。



風が、止む。



蛇儒はにやりとして、灯世に近づいた。



「我らの側に来い。
そうすれば、永遠に愛しい芦多と一緒だ。」



芦多ははっと灯世を見た。



明らかに動揺している。



駄目だ、灯世。



耳を貸すな。



「辰之助からも、逃れられる。」


「灯世!」



芦多が叫ぶが、灯世には聞こえていないようだ。