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怖い。
芦多は率直にそう感じた。
この前、蛇儒と会ったときより、格段に迫力が増している。
「灯世。」
呼んでみるも、聞こえないかのように無視された。
もしかしたら本当に聞こえていないのかも知れないが。
風に髪を遊ばせているのも、恐怖倍増。
そう感じているのは蛇儒も同じようで、今のところ、蛇儒は術を使おうとしない。
「芦多様に、近づくな。」
そう言う声も、いつもより低く、知らない人間のように聞こえる。
芦多は黙って引き下がった。
「無理だ。
わしらは敵同士、殺し合いが仕事。」
「そんなの、聞いたことない。
私達は、ただ静かに暮らしていたいのに!」
灯世の絶叫がこだます。
「わしなら、その願い、叶えられるぞ、姫。」
蛇儒がそう言うと、目に見えて灯世が怯んだ。
風が、止む。
蛇儒はにやりとして、灯世に近づいた。
「我らの側に来い。
そうすれば、永遠に愛しい芦多と一緒だ。」
芦多ははっと灯世を見た。
明らかに動揺している。
駄目だ、灯世。
耳を貸すな。
「辰之助からも、逃れられる。」
「灯世!」
芦多が叫ぶが、灯世には聞こえていないようだ。


