この空の彼方

「この子も、本当の両親のもとへ帰れるといいんですけどね。」


「ああ。
…利都は覚えているんだろうか。」


「さあ。
言いませんものね。」



灯世は利都の頭を撫でた。



利都は安心したように、声を漏らす。



灯世が芦多にもたれかかってきた。



「なんだ、どうした。」


「別に、何も。」



言いながらも、口付けをせがむように、顔を仰向ける。



悪戯心が働いて、芦多は焦らすように微笑んだ。



「なんだ。」



灯世は不満そうに唇を尖らせる。



「わかっているくせに。」


「言わなければ、わからない。」


「意地悪。」



もういいです、と灯世が顔を背ける。



…失敗した。



両腕を灯世の腰に回す。



そっぽを向いているのに、灯世の気持ちが読めるような気がした。



首筋に顔を埋める。



結い上げられた髪が、頬にこそばゆい。



そこに唇をつけると、灯世は照れたように笑った。



「なんだ、望んだことではないのか?」


「…だって、気恥ずかしくて。」


「やっている私の心情を考えろ。」



芦多だって恥ずかしい。



ただ、欲望が勝っているだけだ。