この空の彼方




昼間のことが嘘のように、みんなで夕餉を楽しんだ。



軍で初めて料理をしたという灯世の腕はなかなかのもので、芦多は舌を巻いた。



褒めると、予想通りに照れる。



そこがまた可愛くて。



芦多は始終微笑んでいた。



「まったく、芦多様もすっかり柔らかくなりましたね。」



パチパチと燃える焚き火を見つめながら、敦賀が言う。



そうだな、と周りの連中も敦賀に同意した。



「どういう意味だ。」



むっとして問うが、みんな涼しい顔だ。



「昔はもっと近寄りがたかったんですよ。
憧れであることにかわりはなかったんですけどね。」


「しっかし、到底話しかけられる雰囲気ではなかったなぁ。
千歳様達が不思議で仕方なかった。」


「そうそう。
でも、灯世様が奉公に上がってからは目に見えて変わってった。」



しみじみと、型の連中は芦多の話を始める。



隣の灯世は真剣な表情で聞いているが、本人はたまったものではない。



「おい、やめろ。」


「いいじゃないですかい。
こうやって話す機会なんて滅多にないですよ。」



酒など飲んではいないのに、妙に気分の高揚にているらしい兵士達はかまわずに続ける。



「こうやって話せる日がくるなんて、思ってもみなかったなぁ。」


「それに、こんなに甘い声を聴けるなんて、ね。」



一人が「灯世。」と芦多の声色を真似る。



「まぁ。」



灯世が赤くなった。



「そんな。」


「いえいえ、本人達はわからないかもしれませんが、はたから聞いているとこんなもんですよ。」



そうなのか…。



芦多は頭を抱えた。



これから公衆の前では行動を控えよう。