いける!



そう確信したが、気がつくと仰向けに吹っ飛ばされていた。



「馬鹿者!
懐に入り込んだはいいが、最後に油断してどうする!」



割れた鐘のようにガラガラとした響く声で政隆は怒鳴った。



「情けない。
こんなようでは山城(ヤマガシロ)様にお仕えする『型』は勤まらん。」



呆れて物も言えぬわ、と頭を振り、政隆は背を向けた。



「今日はここまで。
次にはもっと強くなっていろ。」



それは難しい。



言い返そうとして、止めた。



どうせ、説教が飛んでくる。



…そして、政隆が正しいのだ。



このままでは、『型』として失格だ。



主である山城の末息子、辰之助(タツノスケ)の代わりをするならば、長い間敵の目を誤魔化す必要がある。



その為には足止めも必要で、武術や馬術は勿論、心理術も必要だった。



今のところ、まだ11歳である芦多には剣術と馬術しか教えられていない。



まずは剣術を完璧にしなければいけないのだ。