この空の彼方

戦が終わる頃には、数は半分に減るんだろう。



ふと、芦多は手元に視線を落とした。



生と死が背中合わせのこの状況。



いつ攻撃されるやも知れない。



とにかくわかっているのは、一番安全なのは今だということだ。



ぶるん、と輝が鼻を鳴らす。



水を飲ませろという要求なのだろうが、芦多には励ましにも思えた。



「隊長?」



じっとしていた芦多に、部下が心配そうに声をかける。



「……輝を頼む。」



少し考えた後、芦多は輝を放した。



こいつは賢いから、逃げるようなことはしないだろう。



輝は満足そうに鼻を鳴らした。



芦多は早足に人波を抜けた。



兵達は慌ただしく野宿の準備に取り掛かっている。



芦多はなるべく邪魔にならないように、気をつけた。



しばらく歩いて、やっと二番隊の陣地まで辿り着く。



人波に逆らって歩くのは予想以上に大変だった。



少々ぐったりしたものの、ここに灯世がいると思うと自然と足は動いた。



芦多は首を伸ばして辺りを見渡す。



灯世はどこだ?



芦多はしらみ潰しに歩くことにした。



向こうも移動していたのなら、運がなかったと諦めよう。



そうは思ったものの、会える気がした。



そして、実際会えた。



開けた平地で、懸命に煮炊きに挑戦している灯世がいた。



長い髪を結い上げ、着物の袖をまくり上げている。



見たことのない姿に、少しどきりとした。



「…頑張っているな。」



ひょいと後ろから覗き込むようにして声をかけると、ぱっと顔を上げた。



「芦多様?!」



どうしたんですか、と嬉しそうに立ち上がる。