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「今夜はここで野宿かな。」
ぼそりと後ろで型の後輩が呟いた。
そうだな、と芦多も頷く。
だいぶ暗くなってきたし、平地もちょうど見つかった。
ここらで足を止めたほうがいいだろう。
四隊が留まるのに支障はない程度に広い。
芦多は合図を出して足を止めた。
「伝令。」
呼ぶと、まだ少年と呼ぶに相応しい兵が走り出てきた。
「ここらで野宿すると伝えてくれ。」
律儀に復唱し、少年は駆けていく。
利都は不服そうに口を尖らせた。
「僕だって出来た。」
「馬鹿。」
さっきから散々煩わされてきたので、芦多の返事は端的かつ容赦がなかった。
ふんと鼻を鳴らして、芦多は声を張り上げた。
「用意しろ!」
何十人もの男の声が発され、大音量の返事が返ってきた。
こんなに大勢の部下を指揮するのは初めてで、芦多は少々面食らった。
「隊長、どの辺までこの隊の陣地ですかね。」
話し掛けてきた部下を振り返り、芦多は平地を見渡す。
「うーん。
四等分して…だいたい、あの木の辺りだな。」
「はい。」
頼もしい返事をし、彼は仲間に指示するために身を翻した。
今頃、灯世ははどうしているのだろう。
疲れているだろうな。
苦しくはないだろうか。
馬に乗れればいいのだが、食料も減っていない今、そうはいかないだろう。
連れてきていた輝を手近な木に括り、芦多は後列のほうに目をやった。
見えるのは、延々に人、人、人。
大規模な軍の兵が見渡す限りに。


